一般的に鼓膜チューブ留置術(チュービング)の適応となるものは下記のような場合です。
② 滲出性中耳炎の罹患の期間が長引く場合
③ 癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎を引き起こしそうな鼓膜所見がある場合
何回急性中耳炎をくり返したら適応となるのか、どれぐらい長引けば適応となるのか、に関しては、はっきりとした定義はありません。医師の間でも考え方が異なり混乱を招く部分でもあります。
反復性中耳炎は2歳未満に多いことはすでに述べましたが、
滲出性中耳炎が長引く場合ですが、半年以上長引くのは3割前後でそのうち1年をこえても滲出性中耳炎が治らないのは1割ぐらいです。9割は短期あるいは長期の時間を要するにしても自然に治ると言われています。
ではなぜ治療しなければならないか?という疑問が出てきます。
問題になるのは、その間は聴力が悪い、ということです。
乳幼児期は体の成長以外に精神、運動、言語能力も発達してくる、自我が芽生えてくる、あるいは基本的な生活習慣を学ぶ時期です。言語に発達に関しては、4,5歳で聴力が回復していると言語発育は遅れたとしても追いつくことができるとの報告もあります。ですが3歳以下の頃から滲出性中耳炎に罹患して4,5歳になっても滲出性中耳炎が続いている場合は、発達への影響は少なくないと推測されます。
またに
以上から、3歳未満から滲出性中耳炎が持続し、4,5歳になっても治りにくい場合など長期にわたる場合は、言語発達だけでなく情緒面の発達も考慮し、5歳までにはチューブ留置術を検討してもいいのではないかと考えています。
しかし、見つかった時点で、滲出性中耳炎の罹患歴が不明のこともあります。
その場合は以前中耳炎を繰返していなかったかどうか、あるいはお子さんの情緒面がどうか、鼓膜所見、しばらく経過をみて長引きそうかどうか予測し、判断していくしかありません。
最後に、癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎に移行していきそうな鼓膜所見に関しては、少し経過を追って悪化があれば迷うことなくチューブ留置術の適応と考えます。これはおそらくどの先生でも異論はないと思われます。
留置するチューブは短期型、長期型など様々な種類があります。いずれも自然脱落がよく見られます。種類によっては半年程度、長いものでは1年以上もつものもあります。またチューブが脱落後あるいは抜去した後に再発をする人が一定の割合で見られ、大体20~50%に再発が見られると言われています。ですので治るまでチューブを何度も留置することもあります。
またチューブ留置の合併症として、鼓膜穿孔や鼓膜の石灰化が残ることがありますが、いずれも頻度が低く(1~2%程度、長期型では少し増える)、かつ石灰化による聴力低下は極めて軽微であるため、あまり問題にならないのではないかと思います。